医学系大学病院(分院を含む)の敷地内禁煙導入状況の調査(2010年11月)

過去4年に亘ってモニタリングしてきた大学病院の調査で、大学病院の本院(80施設)のうち70施設が敷地内禁煙となったことが判明しました。

また、多くの施設で違反喫煙や敷地境界・周囲での喫煙が問題となっていることも分かりました。

これまでの調査で、敷地内禁煙を維持するためのノウハウを設問の選択肢とした、情報提供型の調査を行うこととしました。

ホームページは作成中です。2011年7月12日更新。

敷地内禁煙を実施している施設でのグッドプラクティスを取りいれた情報提供型の設問と選択肢

設問:すでに敷地内禁煙を実施している病院にお尋ねします。
   下記の選択肢は本調査で判明した敷地内禁煙を徹底するための対策実例の一覧です。
   貴院でも取り組まれている活動にすべてチェックを入れて下さい。

選択肢の内容 それを実行している施設の具体例

□ 敷地内禁煙であることを門や建物の出入口に大型の看板やポスターで明示

 

九州歯科大の例

コメント:

看板は大きければ大きいほど違反喫煙防止効果があります。

敷地内禁煙であることを病院のホームページや病院案内にも明記

敷地周囲も含めて「禁煙の方針」を明確に示す

(医歯学部ではありませんが、グッドプラクティスとして紹介)

http://www.jwu.ac.jp/grp/sr/non_smoking.html

敷地内禁煙であることを入院のしおりにも明記

産業医科大学 精神科(閉鎖病棟)では、外泊中も含め、治療中に喫煙、飲酒をした場合には、退院となる場合があることを入院時に伝えています。

敷地内禁煙であることを定期的に院内放送で周知  

敷地内禁煙であることに関する啓発的なポスター

 

敷地内禁煙であることに違反を繰り返す場合には退院を含む措置の警告を明示

 

事例は佐世保中央病院です。

コメント:

各病室に貼ってあるので、違反はほぼゼロでした。

□ 入院時に「喫煙しない」ことについて誓約書  
□ 入院時にタバコ・ライターを持ち込まないように指導  
□ 入院時にタバコ・ライターの持ち込みの禁止と没収(アルコール類と同様の措置です)  
□ 違反喫煙が発生しやすい場所に監視カメラを設置 長崎大学、写真待ってます。
□ 違反喫煙が発生しやすい場所に監視カメラを設置、かつ、警備員がスピーカーで警告
□ 違反喫煙が発生しやすい場所に人感センサー、人が近寄ると「ここも禁煙!」と自動警告  
□ 違反喫煙が発生しやすい場所に「白衣を着せた案山子」を設置(某自治体病院の事例)  
□ 違反喫煙が発生しやすい場所に「炎センサー(着火した瞬間に警報)」を設置

  某ホテルのトイレの個室の警告=炎センサーは着火と同時に警報音がでます。

□ 患者さんの敷地内の喫煙に対する定期的なパトロール

□ 患者さんが敷地境界や周辺道路で喫煙しないように指導

秋田大学の事例

最寄りのバス停での喫煙を戒める貼り紙

□ 喫煙する患者さんとの想定問答集や対応マニュアルの作成  
□ 職員が周辺道路や敷地境界で喫煙しないように指導

□ 職員が近くの公園やコンビニ等で喫煙しないように指導

職員向け周知文書

□ 喫煙対策委員会・禁煙推進委員会、検討ワーキング部会などの専門部会による取り組み  
□ 職員の喫煙率を下げるための啓発(セミナーや講演会、DVD供覧など)  

□ 職員の喫煙率調査

産業医大の定期健診の設問に組み込まれています。

喫煙歴:あなたはタバコを吸っていますか?

  1. 習慣的にタバコを吸ったことはない

  2. 以前は吸っていたが、今はやめている

  3. 毎日は吸わないが、時々吸う
  4. 毎日タバコを吸っている

喫煙ステージ:あなたは禁煙することにどのくらい関心がありますか。
  1. 禁煙には関心がない
  2. 禁煙に関心はあるが、今後6ヵ月以内に禁煙しようとは考えていない
  3. 6ヵ月以内に禁煙しようと考えているが、1ヵ月以内に禁煙する予定はない
  4. この1ヵ月以内に禁煙する予定である

□ 職員の勤務時間中の喫煙を禁止

勤務時間中は喫煙禁止の大学病院:まだ少ないですがタバコ臭い息での勤務は患者さんに不信感を与えます。

横浜市立大学附属市民総合医療センター、順天堂大学医学部附属順天堂浦安病院、金沢医科大学病院、大阪医科大学附属病院、近畿大学医学部堺病院

□ 職員むけの禁煙外来、禁煙相談  

□ 近医の禁煙外来の紹介、受診勧告

 

産業医大

禁煙外来受診の勧奨フローチャート

□ 地域・自治体と共同して周囲の路上喫煙の対策

順天堂医院は周囲が路上喫煙禁止地区であり、自治体との連携があるとのこと。

近畿大学では、ボランティアの方に敷地周囲の清掃と喫煙自粛の呼びかけをお願いしているとのこと。

   
   
   
   
   

 

調査票のダウンロード

依頼文は以下の通り

平成22(2010)年11月22日
医学部大学病院(分院を含む)の敷地内禁煙状況に関する調査のお願い
 日本呼吸器学会 禁煙推進委員会 委員長
福島県立医科大学 教授 棟方 充
 
医科系大学病院(本院および分院) 病院長殿
 
 貴大学病院におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
 過去4年間にわたる医学部と大学病院(本院)の喫煙対策に関する調査にご協力いただきありがとうございました。

同封の資料に示すとおり2010年3月末時点での敷地内禁煙の実施に関する調査結果(医学部80校中42校、大学病院80施設中68施設)は、

各施設長様あてに送らせて頂きました。その内容は研究班のホームページでも閲覧が出来るようになっております(http://www.tobacco-control.jp/)。
 これまでの調査結果から、敷地内禁煙を実施した多くの施設で違反喫煙(敷地内)への対応、敷地境界および周辺道路で喫煙する患者さんや

来訪者の対策に苦慮していることが判明するとともに、それらの問題点を上手に解決する対策があることも分かってきました。

第5回目となる今回、敷地内禁煙を徹底するためのノウハウを提供するとともに、大学病院だけでなく分院も含む

精神科閉鎖病棟の状況把握に重点を置いた調査を行うことと致しました。
 どうぞ、よろしくご協力お願い申し上げます。
 

本調査は、平成18年に日本呼吸器学会「喫煙問題に関する検討委員会」(委員長:東京女子医科大学病院長 永井厚志)の

医学部と大学病院の喫煙対策に関する実態調査として企画され、厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業)

「受動喫煙対策にかかわる社会環境整備についての研究」(主任:産業医科大学 大和)が事務局として調査を実施しました。

平成19年度から9学会禁煙推進学術ネットワーク(委員長:日本循環器学会 藤原久義)との共同研究として歯学部の調査も実施され、

平成20年度からは日本呼吸器学会「禁煙推進委員会」および「わが国の今後の喫煙対策と受動喫煙対策の方向性とその推進に関する研究」

(主任:大和)に調査が引き継がれました。平成22年度より独立行政法人国立がん研究センター がん研究開発費

「たばこ政策への戦略基盤の構築と政策提言・実施・評価メカニズムに関する研究 ―特に、禁煙支援政策の実施基盤の構築と評価指標の開発」

(主任:国立がん研究センター 望月友美子、分担:金沢大学 野村英樹、長崎大学 門田耕一郎)との共同調査としても実施されます。